古典にみる相剋調整と陰実輸瀉について | 関西大阪での鍼灸・経絡治療の勉強会・セミナー、(一社)東洋はり医学会関西


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2020.02.20

古典にみる相剋調整と陰実輸瀉について

東洋はりが鍼灸史に遺した技術革新は沢山ありますが、相剋調整と陰実和法もそのうちの1つです。
東洋はりSTYLEを踏襲した、私たち(一社)日本はりは、さらに陰実相侮証と陰実相乗証における適応側の法則を明らかにしました。

陰実証は、陰経の邪気実を瀉法する証ですが、三通りのやり方が考えられてきました。

  1. 陰経を直接瀉す。
  2. 同経の畏穴を補って輸瀉する。
  3. 表裏の陽経を補って輸瀉する。

臨床と理論は別物ですが、難経では以下のように定めています。

相剋調整について
原文
「七十七難曰.經言.上工治未病.中工治已病者.何謂也.然.所謂治未病者.見肝之病.則知肝當傳之與脾.故先實其脾氣.無令得受肝之邪.故曰治未病焉.中工治已病者.見肝之病.不暁相傳.但一心治肝.故曰治已病也.」



「問うて言う。上工は未病を治し、中工は已病を治す。ということが、昔の医書にありますが、何のことでしょうか?答えて言う。未病を治すというのは、病邪が七伝をするのを、未然にふせぐことによって、病をなおすことです。たとえば、肝の臓が病んでいるのをみて、これが危険な七伝をするときは、次に脾に伝えることを心得ていて、まず脾気を充実させ、脾の臓が肝の邪をうけることのないようにするのです。これを未病を治すといいます。これのできる者が上工、つまり、優れた医人です。
已病を治すというのは、治療するのに、病邪の七伝の心得が充分になくて、ただ、病んでいる臓だけをなおそうとするのをいいます。たとえば、肝が病んでいるのをみて、これが脾に伝えるかもしれないことはわからずに、ただ、一所懸命に肝の病を治そうと努力するものです。これを已病を治すといいます。このような者は中工、つまり、まあまあの医者です。」

☞☞☞肝脾相剋証の存在を示唆しています。

さらに、ほぼ同じような内容の記述が、雑病における湯液の聖典『金匱要略』にもあります。

◆臟腑經絡先後病脉證第一.

問曰.上工治未病.何也.

師曰.夫治未病者.見肝之病.知肝傳脾.當先實脾.四季脾王不受邪.即勿補之.中工不曉相傳.見肝之病.不解實脾.惟治肝也.夫肝之病.補用酸.助用焦苦.益用甘味之藥調之.酸入肝.焦苦入心.甘入脾.脾能傷腎.腎氣微弱.則水不行.水不行.則心火氣盛.則傷肺.肺被傷.則金氣不行.金氣不行.則肝氣盛.則肝自愈.此治肝補脾之要妙也.

肝虚則用此法.實則不在用之.經曰.虚虚實實.補不足損有餘.是其義也.餘藏準此.

輸瀉の有無について
原文
「七十三難曰.
諸井者.肌肉淺薄.氣少不足使也.刺之奈何.然.諸井者木也.滎者火也.火者木之子.當刺井者.以滎瀉之.故經言.補者不可以爲瀉.瀉者不可以爲補.此之謂也.」



「~それで、昔の医書にもこうあります。補すべきときに、瀉法でこれを代用するような治法はとるな。あくまで補法をもってせよ。瀉すべこときに、補法でこれを代用するような治法はとるな。あくまで瀉法でもってせよ。~」

☞☞☞額面通りに受け取れば、輸瀉はするなと戒めています。


臨床からみた相剋調整と陰実輸瀉

ただし、臨床は、生身の患者は、理論を簡単に超えてきます。
難経通りかもしれないし、違うかもしれません。
答えは患者が教えてくれます。
病体に素直に学び、各自の事実をもって、囚われのない心でディスカッションすべきです。
事実は理論に勝ります。
事実こそが科学です。
これからの伝統鍼灸は科学することが大切です。

ただし、鍼灸を科学するとは、現代医学的に解明するということではありません。
もちろん数値化することや、神経伝達物質や、何かの成分がどうなったとか、効果の機序を現代医学的に解明することももちろん大切ですが、私が私たちが重視するのは、

  1. 効いたかどうか?
  2. 治ったかどうか?
  3. 元気になったかどうか?

これに尽きます。
これらを患者と共に双方向で客観的に共有することを神を治すとします。
私たちは日々脉診流経絡治療を科学して、神気の盛衰を確認しています。